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田舎暮らしの本 2001年10月号に掲載されました。 出版社 「宝島社」


インターネットで始まる@ホームな農園ライフ
7月15日 高橋さんが取材に来ました。
家庭や職場にいながらにして、ホームページで自分の畑の野菜の様子が見られる農園があるという。いったいどんなものなの?ホームページはどう役立っているの?早速現地で話を聞いてみた。
家庭や職場にいながら、ホームページで野菜の生育状況が見られる貸農園をこの春立ち上げたのは、甲府盆地の東の端、山梨市七日市場にある約十六・の畑で、桃とブドウを栽培する専業農家の四代目園主、手島宏之さん44歳)。
手島さんは、十年間のサラリーマン生活を経て、父親の後を継いだが、もともと経営はJAへの出荷に頼っているため、どんな人が自分のつくる果物を食べてくれているのかもわからない。そんな一方通行の流通システムに違和感を覚えていた彼は、従来の販路に加えて、ホームページを使った直販を四年ほど前から始めた。
「メールのやりとりだけでなく、なかには遠方から、直接うちの農園を訪ねてくれる人もいるんです。そんな人たちと話をしていると、田舎の私たちには当り前のことを都会の人が知らなくて驚かされたり、反対に私の知らないことを教えてもらったりできるのが、とても新鮮でした」
 そういった経験をするなかで、農家の高齢化が進み増えつつある遊休農地を貸農園にして都会の人に使ってもらえば、農業を共通の話題にした仲間づくりができるのではないかと考え、新たに始めたのが、ホームページを活用した貸農園「はたけでネット」というわけだ。
インターネットの先に広がるリアルでおいしい体験
 現在十五区画ある菜園のうち四区画が貸出中で、畑には「ほのぼの農園」「もっくんズ農園」など、ホームページで見覚えのある看板が並んでいる。
 7月末に結婚したばかりの「ほのぼの農園」斉藤忠之さん(35歳)洋子さん(33歳)夫妻が、この農園と出会ったのは、もちろんインターネット。
「ぼくの実家には家庭菜園があったんですが、種のいっぱい入ったキュウリの味が忘れられなくて…。どうせなら自分たちでおいしい野菜をつくろうと、横浜から高速を使わなくても通える甲府あたりまでで貸農園を探していたら、ここがヒットしたんです」 
 
斉藤さんは、二週間に一度のペースでここにやって来るが、だいたい十日に一度、手島さんから、野菜の生育状況を伝える最新の映像がインターネットで送られてくる。さらに、畑の様子に何か変化があれば、とのときどきに「草が生えてきたよー」「枝豆にカメ虫が大量発生したよー」などというメッセージが。この日は「トウモロコシがおいしそうだよ」という連絡をもらって飛んで来た。

「もっくんズ農園」で汗をいっぱいかきながら、ジャガイモを掘る宮野由起子さん(32歳)悌綺(ともき)くん(4歳)
親子は、車で約四十分の石和町から畑に通っている。「息子は、自分の姿がホームページに出てくるのがうれしくてしかたがないみたい。野菜の様子をインターネットで見て、月に二、三度ここに通って本物の土や野菜と格闘するうちに、子どもは自分の畑で自分の野菜をつくっているんだ、という意識をすごく持つようになりました。じつは、ともきはナスが苦手なんですが、『もっくんズ農園』で採れたナスだけは、ちゃんと食べるんですよ(笑)」
 
ホームページの映像だけ見ていても、その場に行って手をかけてやらないと、おいしい野菜は食べられない。失敗したら簡単にリセットできる、何年か前に流行ったタマゴッチのバーチャルな世界とは根本的に違うのだ。
野菜づくりを通して広がる、人とのつながり
 それにしても、手のかかる果樹栽培の傍ら貸農園もやって、おまけにホームページもつくっているなんて、さぞたいへんだろうと思いきや、「いやー、趣味でやってることだから楽しいですよ。利用者が増えれば、もっと広い場所に移るつもり」と、手島さんはデジタルカメラを片手に農園のなかを歩き回り、あれやこれやと農作業する人に声をかけては、日焼けした顔をほころばせる。

そんな手島さんの人柄のせいか、利用者同士で自分のつくっていない野菜を融通しあったり、畑のなかを子どもたちが走り回ったりと、農園にはアットホームな雰囲気が溢れている。

「種まいて、芽が出て、大きくなって喜んでもらったときは、ぼくもうれしい。そこから共通の話題も増え、その人とのつながりが深まり、またそこから人の輪がどんどん広がっていく」
 
インターネットは、あくまで野菜づくりという共通の楽しみを通した、出会いのきっかけ。それをどう深め広げていけるかは、そこに関わる生身の人間次第といえそうだ。





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